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"Intermediate" 

January 11 - 30. 2016

Iriya Gallery, Tokyo

    

長田堅二郎の作品展について
 
彼は東京芸術大学で彫刻を学んだのであるが、いわゆる彫刻を造ることに疑問を感じ、作品造りに素材を細く薄くしていくことを指向した。それは彼自身の考える作品への想いは、そうすることにより作品が彫刻として存在していくと考えたからである。
 
 私が実際に彼の作品に接したのは2014年12月の潺画廊(東京,深沢)での展覧会であるが、その直前に第12回大分アジア彫刻展で大賞を受賞した作品を画像で見て、実際に見たいと思った直後であった。数寄屋建築の画廊空間での展示であり、作品の一つ一つが私に何かを語りかけてきて、非常に心地よい時間と空間を体感させてくれた。
 
 彼は作品-derivation-は 身体,自然,社会 などの万物に共通する枝分かれの構造を用い、その構造自体を彫刻化したと言っている。私には彼のそういった行為自体が、宇宙の中の小さな細胞のようなものをつくり、それらが集まって大きな宇宙空間になっていくことを想いながら作品を創っていると思える。
 
 彼の作品は見る人それぞれが描く異次元の空間へといざなうのである。このように思えてくるのも、作品を創るということに、社会や歴史といった概念や系譜、それら世界を構築する要素の視覚化を常に考えているからであろう。設置される面から数センチ浮かせることにより、そこから感じる空間の空気の質が、色んなことを観る人に想起させるのである。
 
 今年の4月に渋谷で拝見した糸の作品は、刺繍糸を張り巡らし空間を造りだしている。円筒形状の作品は約7mあり丁度目の高さにある。また部屋の相対する壁に水平に且つ平行に無数の糸が等間隔に張られている。糸は物質的なものから、時として目に見えないものへと変容してくる。その糸が造りだす空間は、私には目に見えない日常から逃避していく自分を感じるのである。
 
 物の存在程不確かなものはない。彼の作品は目に見えないが見たくなる・感じたくなる空間-むしろ宇宙を感じさせてくれる作品ではないだろうか。
 

アートディレクター 乕屋正